Monday, September 8, 2014

そこにあるもの - amber gris

そこにあるもの
kanji

5カラットのリングと
散らばったジェリービーンズ
買ったけれど気に入らない
マニキュアの赤色

家路につく恋人達
横たわる物乞い
路地裏の聖歌隊
子を無くした母猫

窓を叩く風に夜毎怯えて
軋む柱の下、
ただのひとつさえ為す術も無く

「ありがとう」の言葉でさえ
今のその手には余る。
突き付けられた事実に刃を向けただけで

「それじゃ、またね」を言いかけて
言わずに視線を落とす
都合のいい嘘はもう、よそう。

羽根を休めた鳥
檻で呻くライオン
旅人はまた出会うと
シェイクスピアは言ってない

在り合わせの木材で組み上げた
粗末な墓標にも毎日絶えず花が咲けばいい

腫れ物に触る様な目で
怪訝そうに他者は窺う。
肩が当たっても
振り返る刻も惜しむくせに

誰かさんが歌っていた
死ぬことを僕は唄う
この瞬間も確実にそれはその身を蝕んでる

やがてはいつか
自らに訪れると知り、
それでも まだー。

膝に着いた土を
見せない様に笑った。
ピアノが壊れた日
君も歌を捨てた。

まるで何もなかった様に、
指の隙間すり抜ける
かりそめの希望、
厳かな絶望、知り得て 尚
強き人が詩っていた
死ぬ意味を僕が唄う

糸を紡ぐ様に、ただー。

遠く、遠くに行く人、
二度と会えない人、
願わくば今、一度
笑い合いたいんだ。

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